大判例

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東京高等裁判所 平成11年(ネ)836号 判決

控訴人(被告)

株式会社ミニボックス

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁護士

上條義昭

高木一嘉

被控訴人(原告)

キャラウェイゴルフカンパニー

代表者

【B】

訴訟代理人弁護士

中川康生

山川博光

主文

一  本件控訴に基づき、原判決主文第二、第三項を次のとおり変更する。

「 二 控訴人は、被控訴人に対し、三〇七三万二五二四円、並びに、内一五一三万七〇九八円に対する平成六年四月二六日から、内五三〇万七八〇八円に対する同年四月三〇日から、内六九三万九五八八円に対する平成七年四月三〇日から、内二五八万五一七七円に対する平成八年四月三〇日から及び内七六万二八五三円に対する同年八月二九日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三 被控訴人のその余の請求を棄却する。」

二  その余の本件控訴を棄却する。

三  訴訟費用は、第一、第二審とも、三分の二を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴人の求めた裁判

「原判決中、控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。」との判決。

第二事案の概要

一  争いのない事実等は、原判決五頁以下の「一」の項に示されているとおりであり、争点は、原判決一二頁以下の「二」の項に示されているとおりである(ただし、損害算定方法につき、以下の二3(控訴人)及び三3(被控訴人)記載のようにそれぞれ主張の一部に変更がある。)。

二  原判決の認定、判断につき、控訴人は次のとおり主張した。

1  真正品であることの証明

原判決が、被告ゴルフクラブ等の販売が非真正品(被控訴人又はこれと同視し得る者の意思に基づき流通に置かれたものとは認められない商品)に関するものであると認定したのは、次の二点からみて誤りである。

(一) 平成一一年六月二五日、控訴人の倉庫に保管されていたキャラウェイゴルフクラブのシャフト一五七五本を調査した結果、グリップ部分に製造番号を刻印したシールが貼付されていることが判明した。番号がないのは一一本、番号不明は八本にすぎなかった。この結果、控訴人が被控訴人の非正規代理店から輸入したと原判決で認定されたゴルフクラブ二九八一本(原判決別表Gの「非真正品」)のほとんどが、被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思によって流通に置かれたもので、真正な商品であったと推測できる。

(二) 原判決は、一六四一本のゴルフクラブが非真正品であるとした(一二頁)。しかし、非正規代理店とされているうち、一七三五本の仕入元であるジャパンインターナショナルは、米国エドウィンワッツという被控訴人の正規代理店から仕入れている。他の七五九本は、株式会社アクティブインポートが、被控訴人の正規代理店であるスポーツワールドセンターから仕入れたものである。これらの事実からすると、原判決の右認定は誤りである。

2  損害不発生

被控訴人は、正規代理店に真正品を卸した段階で既に取引上の利益を得ている。

控訴人が仕入れた真正品一四六一本のうち六二八本は他社のシャフトに付け替えたが、これによって、被控訴人がいったん確保した取引上の利益が遡及的に損なわれ、新たに被控訴人に損害が発生するということは考えられない。控訴人が非正規代理店から輸入したゴルフクラブについても、もともとは被控訴人が正規代理店に卸した商品であったから、被控訴人は、この段階で取引上の利益を取得している。

3  損害算定方法

(一) 原判決は、固定費をゴルフ売上額からの控除を認めなかった。しかしながら、次の固定費のうちゴルフ売上と関連性があるものは、売上額から控除すべきである。

人件費(役員報酬、従業員給料、賞与、法定福利費)、支払手数料(会計事務所と社会保険労務事務所への支払)、自動車経費、通信費、事務消耗品費、事業維持費(消耗品費、水道光熱費、修繕費)、減価償却費、地代家賃、租税公課(本社の土地建物にかかる固定資産税)、保険料、リース料、管理警備料。

(二) 控訴人は、控訴人全社の経費を本社経費、自動車事業に関する経費、ゴルフ事業に関する経費の三つに区分し、一三期から一七期ごとに集計したが、本社経費について、各事業の粗利益率等を基準として、ゴルフ事業に関係する経費と自動車事業に関する経費に配賦した結果、ゴルフ事業部門における経常利益は、次のとおりとなる。

一三期(平成四年五月から五年四月) 一〇九二万四四九七円

一四期(平成五年五月から六年四月) 二七四五万三九〇八円

一五期(平成六年五月から七年四月) 一八三三万九八四八円

一六期(平成七年五月から八年四月) 一〇九一万三三九四円

一七期(平成八年五月から同年八月) 一八二一万八三〇六円

(三) このうち、キャラウェイ商品(他社製造のシャフトに交換して販売した分、非真正品販売分、ヘッドのみ販売分)の利益部分を算出すると、別紙「キャラウェイ損益計算試算表」のとおりである。各期における本件商標権を侵害したとされる商品を販売したことによる経常利益は、同別紙の各期のキャラウェイ欄の経常利益の箇所に記載のとおりである。すなわち、

一三期 二〇八万六五七九円

一四期 二五五万三二一三円

一五期 一四六万七一八八円

一六期 四一万四七〇九円

一七期 三四万六一四八円

(四) 損害賠償額を算定するには、これから更に、他社製のシャフト部分の利益を控除しなければならない。

三  被控訴人の反論

1  真正品の主張について

(一) 被控訴人は、平成四年(一九九二年)から平成八年(一九九六年)までの間、ゴルフクラブのシャフトのグリップ部分に製造年月日を特定する番号を付していたことがある。しかし、その期間、非常に多数の同じ番号配列の模造キャラウェイゴルフクラブが市場に氾濫し、右番号配列をもって被控訴人の真正品と判定することが困難になり、コスト面も考えて、被控訴人は一九九七年以降この番号付けを行っていない。

(二) 控訴人が、製造番号を確認したことによって真正品であると主張するゴルフクラブには、正規代理店から購入したゴルフクラブのシャフトを使用したものも含まれるはずであり、これは、三分の一程度存在する。また、同じ表示の模造品が市場に出回っていたことも考えると、棚卸しの結果をもって、真正品が原判決が説示する以上に存在していたとする控訴人の主張は、理由がない。そもそも、本件登録商標の付されたゴルフクラブのシャフトを他社のシャフトと付け替えて販売の対象となった控訴人のゴルフクラブは、それが真正品か非真正品かを問わず、本件商標権を侵害している。

(三) 控訴人主張のスポーツワールドセンターは、被控訴人の正規代理店ではない。また、米国エドウィンワッツは被控訴人の代理店ではあるものの、控訴人がジャパンインターナショナルから仕入れた一七三五本のゴルフクラブが、米国エドウィンワッツからジャパンインターナショナルに仕入れられたとする証明はない。

2  損害不発生の主張について

控訴人の損害不発生の主張は、商標権消尽の理論に基づくが、本件では、控訴人は被控訴人商標の付されたゴルフクラブのクラブヘッドと他社のシャフトを組み合わせ、被控訴人のゴルフクラブと同一性のないものにして、販売している。このような控訴人の行為に商標権消尽の理論の適用の余地はない。

3  損害算定方法の主張について

(一) 被控訴人は、既に被控訴人商品の開発を完了し、現実に営業的製造、販売を大々的に行っている。既存商品の組換等の加工を行い市場に流通させているにすぎない控訴人の営業と同様の方法でその営業(加工、販売)を被控訴人が行う場合には、控訴人商品の販売個数は、被控訴人が新たな商品開発のための投資や従業員の雇用を要することなく、そのままの状態で加工、販売ができる個数の範囲内にある。このような場合には、逸失利益推定の前提事実である控訴人が商標権侵害行為により受けた利益も、商標権侵害商品の売上額から、その加工、販売のための変動経費のみを控除した額と考えるべきである。

(二) 当控訴審において、控訴人は、販売及び一般管理費を「自動車事業部」、「ゴルフ事業部」、「本社事務所」に部門分けして、各部門ごとの直接費用内訳書を作成して提出したが、右各直接費用として記載された金額自体は争わない。

控訴人は、「本社事務所」費用のうちの一部を「ゴルフ事業部」に関係する販売費及び一般管理費として、ゴルフ部門の売上から控除すべきであるとするが、争う。控訴人は、「ゴルフ事業部」に直接関連する費用として、固定資産税及び減価償却費を挙げるが、これも争う。控訴人が主張する固定資産税及び減価償却費の対象となる土地建物は、昭和五九年、六一年に取得されており、控訴人がゴルフ事業を開始する前からの所有であって、非変動の原価要素であり、本件では取り上げる必要のない費用である。

(三) 以上の主張に基づき、控訴人によって販売された本件商標権侵害の対象となる被告ゴルフクラブ等の各期ごとの売上額に、控訴人のゴルフ用品販売の限界利益率を乗ずることにより得られる被控訴人の逸失利益(損害)額は、次のとおりである。

一三期 一二一三万七〇九八円

一四期 五三〇万七八〇八円

一五期 六九三万九五八八円

一六期 二五八万五一七七円

一七期 七六万二八五三円

第三争点に対する判断

一  争点1(違法性欠如の有無)に関する判断

1  被告ゴルフクラブ等(原判決別紙目録(一)ないし(八)のゴルフクラブヘッド及びゴルフクラブ)の販売が、真正品を販売したものとして違法性を欠くかについての争点1に対する判断は、原判決三一頁以下の「一」の項に示されているとおりであり、当裁判所も、この点に関する控訴人の主張は理由がないものと判断する。

2  控訴人は、原判決後に調査した結果、被告ゴルフクラブ等のグリップ部分に製造番号が付されたものが大部分であることが判明したので、被告ゴルフクラブ等は被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思によって流通に置かれたものであることが推測できると主張する。しかしながら、この製造番号が被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思に従って付されたことを認めるべき的確な証拠はない。被控訴人の主張によれば、控訴人主張の製造番号は単に製造年月日を特定するためだけのものであり、この表示を模造した商品が多数出回ったというのであって、これに対し控訴人からは的確な再反論の主張はない。したがって、原判決において認定の前提とされた正規代理店以外からの購入品二九八一本(原判決別表G)の中に、控訴人の主張する製造番号が控訴人又はこれと同視し得る者によって付されたものがあるものと認めることはできない。また、この事実を具体的に認めるに足りる的確な証拠もない。

よって、控訴人の右主張は理由がない。

3  控訴人は、スポーツワールドセンターが被控訴人の正規代理店であると主張し、スポーツワールドセンターを経由して控訴人が購入した商品も存在すると主張するが、スポーツワールドセンターが被控訴人の正規代理店であることを認めるべき証拠はない。また、控訴人主張のように、ジャパンインターナショナルにおいて被控訴人の正規代理店である米国エドウィンワッツから仕入れた商品があると認めるべき証拠もない。

4  なお、控訴人は、本件口頭弁論終結後、平成一二年三月八日付け準備書面を提出し、その中に、「顧客は、自分に合ったシャフトの選択を求めたり、当時のプロがゴルフクラブヘッドに他社製のシャフトを付け替えたゴルフクラブを使用していた方法を真似てプレーするのを一種のあこがれとしていた。そのため、控訴人がこの顧客の需要を満たす販売方法を取ったからこそ、売上を伸ばすことができた。

つまり、被控訴人製のクラブヘッドに他社製のシャフトが付け替えられたゴルフクラブだからこそ、売上を伸ばすことができたのである。控訴人が実施したアンケート結果でも、シャフト交換を希望した顧客は約七〇%に達している。」旨の主張部分がある。

しかしながら、控訴人が主張するような販売態様によって、本件商標を付した被控訴人の真正品の販売が侵害されたことは、控訴人の主張自体からも自明のことである。右主張は、本件商標権侵害ないしこれに伴う被控訴人の損害発生を更に裏付けるものでこそあれ、被控訴人の本訴請求を何ら左右するものでない。控訴人の右主張は理由がない。

二  争点2(損害)についての判断

1  控訴人は、被告ゴルフクラブ等は、ゴルフクラブそのままであるにしろ、シャフトを付け替えたものであるにしろ、もともとは、被控訴人が正規代理店に卸した商品であったから、その段階で被控訴人は取引上の利益を得ていると主張する。

しかしながら、まず、被告販売クラブヘッド(原判決一〇頁の(1))及び被告製造ゴルフクラブ(原判決一〇頁の(2))が、被控訴人が行っていない態様によるもので、被控訴人ないしこれと同視し得る者の意思に基づいて流通させた真正の商品ではないことは、原判決の説示するとおりである(三〇頁以下の1、2の項)。このような態様の被告販売クラブヘッド及び被告製造ゴルフクラブを販売する行為は本件商標権を侵害するものであって、商標権侵害による損害が発生していないとする控訴人の主張は、到底採用することができない。

被告輸入ゴルフクラブ(原判決一一頁の(3))は、控訴人が非正規代理店から購入したものであるが、前記のとおり、これらが控訴人ないしこれと同視し得る者の意思に基づき流通過程に置かれたものであるものと認めることはできないので、商標権侵害の事実は明らかであり、商標権者である被控訴人の損害が発生していないと認めることもできない。控訴人の主張は、いわゆる消尽論に依拠するものと理解されるが、仮に消尽論を適用するにしても、これによって商標権侵害が違法性を欠きあるいは損害が発生していないといえるためには、当該商品が商標権者ないしこれと同視し得る者の意思に基づいていったん流通に置かれたことが前提として認められなければならないところ、本件においては、この前提事実を認めることができないので、消尽論を適用することもできない。

よって、本件商標権侵害について、損害が発生していないとする控訴人の主張は理由がない。

2  損害額について判断する。

(一) 本件商標権を侵害する被告ゴルフクラブ等の販売によって得た控訴人の利益額について

(1) 本件において控訴人の得た利益額を算定するに当たっては、粗利益率(売上額から売上原価を控除した額の売上額に対する割合)から、変動経費率(売上に伴って変動する経費額の売上額に対する割合)を控除した利益率を算定の基礎とするのが相当である。

ア 控訴人の営む事業のうち、ゴルフ用品の販売に係る売上総利益率(粗利益率)は、甲第五八号証ないし第六五号証及び甲第七七号証並びに弁論の全趣旨によれば、第一三期(平成四年五月一日ないし平成五年四月三〇日)、第一四期(平成五年五月一日ないし平成六年四月三〇日)、第一五期(平成六年五月一日ないし平成七年四月三〇日)、第一六期(平成七年五月一日ないし平成八年四月三〇日)、第一七期(平成八年五月一日ないし同年八月二八日)において、順に四七・一五%、三四・二六%、三六・〇九%、三四・〇六%、三六・〇〇%であると認められる。

イ 変動経費額については、控訴人の事業における全販売費及び一般管理費から、①ゴルフ用品売上と無関係の費用、②固定費(支払報酬、減価償却費、役員報酬、地代家賃、租税公課、保険料、諸会費、リース料、寄付金、雑費、管理警備料等の間接費)の合計額を控除した額を、ゴルフ用品売上金額の全売上金額に対する割合で按分した金額とすべきであり、変動経費率は、右変動経費額を基礎として算定することができる。

甲第五九号証、第六三号証ないし第六六号証及び甲第七七号証並びに弁論の全趣旨によれば、右の方法により算定した結果は、第一三期(平成四年五月一日ないし平成五年四月三〇日)、第一四期(平成五年五月一日ないし平成六年四月三〇日)、第一五期(平成六年五月一日ないし平成七年四月三〇日)、第一六期(平成七年五月一日ないし平成八年四月三〇日)、第一七期(平成八年五月一日ないし同年八月二八日)のゴルフ用品関連の変動経費率は、順に一八・七四%、二〇・二八%、二二・六五%、二三・二四%、二〇・〇四%となり、したがって、右各期のゴルフ用品売上の利益率は、順に二八・四一%、一三・九八%、一三・四四%、一〇・八二%、一五・九六%となることが認められる。

控訴人は、利益率の算定に当たって、支払報酬、減価償却費を控除した額を基礎とすべきであると主張する。しかし、控訴人は車両販売及びゴルフ用品販売の二つの事業を営んでいるが、控訴人における被告ゴルフクラブ等の販売が控訴人の営む事業全体の中で占める比率は少ないこと、被告ゴルフクラブの販売態様は、雑誌広告に基づく通信販売によるものであること等の点に照らすならば、右支払報酬、減価償却費は、被告ゴルフクラブ等の売上額の増減に伴って変動する性質を有するものと解することはできず、結局控訴人の右主張は採用することができない。

また、甲第七三号証ないし第七六号証によれば、控訴人が所有する土地建物は、本件控訴人の商標権侵害行為が開始された平成四年よりも前の昭和五九年ないし昭和六一年に、控訴人が組織変更及び商号変更前の有限会社松本商事名義で取得したものであることが認められる。他に、控訴人所有の不動産がゴルフクラブの営業のために取得したものであることを認めるべき証拠はないので、控訴人が主張する租税公課のうちの固定資産税及び減価償却費をゴルフ用品売上に関係する費用と認めることはできない。

他に、控訴人が準備書面に添付して提出した各期の損益計算書及びその他の資料を分析して控訴人のゴルフ事業部の利益率を算定した公認会計士【C】作成の甲第七七号証の計算過程に疑問を呈すべき事実関係を認めるべき証拠はない。

(2) 以上の利益率を適用して控訴人の利益を計算すると、以下のとおりとなる。

なお、右売上額は、①被告販売クラブヘッド、②被告製造ゴルフクラブ、③被告輸入ゴルフクラブ(ただし、正規代理店以外から購入したゴルフクラブに限った。 正規代理店以外から購入したゴルフクラブの販売個数のキャラウェイ・シャフト・ゴルフクラブの総販売個数に対する按分比率で算定した。)の各売上額の合計である。

ア 第一三期(平成四年五月一日ないし平成五年四月三〇日)被告ゴルフクラブ等の売上額は、四二七二万一二二〇円。

5,188,222+34,631,443+4,374,435*1,641/2,474=42,721,220これに、利益率二八・四一%を乗じると、控訴人の利益額は一二一三万七〇九八円となる。

42,721,220*28.41%=12,137,098

イ 第一四期(平成五年五月一日ないし平成六年四月三〇日)被告ゴルフクラブ等の売上額は、三七九六万七一五九円。

125,980+27,896,360+14,992,982*1,641/2,474=37,967,159これに、利益率一三・九八%を乗じると、控訴人の利益額は五三〇万七八〇八円となる。

37,967,159*13.98% =5,307,808

ウ 第一五期(平成六年五月一日ないし平成七年四月三〇日)被告ゴルフクラブ等の売上額は、五一六三万三八四二円。

90,100+18,355,320+50,035,440*1,641/2,474=51,633,842これに、利益率一三・四四%を乗じると、控訴人の利益額は六九三万九五八八円となる。

51,633,842*13.44%=6,939,588

エ 第一六期(平成七年五月一日ないし平成八年四月三〇日)被告ゴルフクラブ等の売上額は、二三八九万二五八一円。

16,925,654+10,503,460*1,641/2,474=23,892,581これに、利益率一〇・八二%を乗じると、控訴人の利益額は二五八万五一七七円となる。

23,892,581*10.82%=2,585,177

オ 第一七期(平成八年五月一日ないし同年八月二八日)

被告ゴルフクラブ等の売上額は、四七七万九七八五円。

2,207,740+3,877,660*1,641/2,474=4,779,785これに、利益率一五・九六%を乗じると、控訴人の利益額は七六万二八五三円となる。

4,779,785*15.96%=762,853

カ 以上の合計利益額は、二七七三万二五二四円となる。

そうすると、控訴人が本件商標権を侵害したことによって被控訴人が被った損害額は、右同額と推定される。よって、控訴人はこれを賠償する義務を負う。なお、遅延損害金については、被告ゴルフクラブ等の販売は、遅くとも各決算期の末日までに行われたと認められるから、各決算期の最終の日から起算すべきである。

(3) 控訴人は、被告ゴルフクラブ等の販売事業は、控訴人の営む事業のうちのわずかなものなのに、その利益額が多額に過ぎる旨主張するが、右主張は、前記認定に照らし採用することができない。また、控訴人は、他社製のシャフト部分の利益も控除される必要があると主張する。しかし、前記のとおり、控訴人が当該ゴルフクラブを販売したことによって得られた利益に基づき算定すべきであるところ、控訴人の右主張によってもこの算定結果を覆すべき具体的な事実関係は明らかでないので、右主張も採用することができない。

(二) 弁護士費用について

本件事案の性質、内容、訴訟の経過等の諸般の事情を総合すれば、控訴人の本件商標権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用に係る損害としては、三〇〇万円をもって相当と認める。なお、これに対する遅延損害金は、本件侵害行為を一体とみてその当初から起算すべきである。

第四結論

以上のとおり、本訴請求は、被告ゴルフクラブ等の販売、頒布、販売広告の差止めと、損害賠償金三〇七三万二五二四円、並びに、内一五一三万七〇九八円に対する平成六年四月二六日(平成五年四月三〇日の後の日)から、内五三〇万七八〇八円に対する平成六年四月三〇日から、内六九三万九五八八円に対する平成七年四月三〇日から、内二五八万五一七七円に対する平成八年四月三〇日から、及び内七六万二八五三円に対する同年八月二九日から、それぞれ支払済みまで民法所定利率による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

よって、原判決中、金銭支払を命じた部分を右の趣旨に変更し、差止めを命じた部分についての控訴を棄却することとする。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平)

裁判官 市川正巳は、転補のため署名押印することができない。

〈以下省略〉

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